四百三十二

 

 どんな女性の美も、特定の男性に向けられたものではない。彼女はそのまま美的に完結して存在するのである。有機的な人間のことにかぎらない。たとえば自然といったような無機物でさえ、それが美を提示するのは自分に向けてではないと感知し、自分とは別の、自分からは独立した存在であると感じることが大きな喜びであるような、尽きることのない共存の満足感をもって描かれた芸術は少ない。普遍の照射を行う他を見つめながら、自らも普遍の照射を願う静かな決意にあふれ、他の照射の助けを借りて自らを発光させようという野心を封じる鋭いくびきとでもいったものを内蔵する、厳かな芸術に浸りたいものだ。

 

使命

         四百三十一

 

 倦怠と性的狂乱のあいだを交互に往復していた時代に、私の使命はその時代から脱皮しないことに定まった。

 

川田拓矢0歳

         四百三十

 

 十五歳 ― あの女の涙。彼女は何か重要なことをしゃべりながら思わずポロリと涙をこぼした。でもそれは、あたかも彼女の思想を象徴するような性質のものであって、つまり私には迷惑きわまる涙だった。そのひとしずくの涙こそ、そのとき私を彼女のものにしたすべての力で、また、いまもなお私をしっかりと呪縛している罠であった。

 

川田拓矢 21歳