悪ふざけ

              
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                                       三百七十七
 
 人びとが人間の魂の美しさを求めない特定の時代に映える文学作品にあるのは、怠惰な、目利きでない群衆の動向を是認するまちがった哲学、浅はかな詭弁、不自然な構想、その意味での少しばかり目新しい色彩、ただそれだけである。作者も批評家も、そんな時代に悪賢く立ち回ることのできる才覚に恵まれたことをしみじみと感謝し、有頂天になっている。そういう時代は早く過ぎ去らなければならない。
 もはや文壇そのものがそういった饒舌で正しそうな作品に騙されないようになり、その種の作品もすっかり悪ふざけの手段に行き詰まってしまったら、じっと耐えて待ち構えていた天賦の芸術家が、数万馬力で時代を喜ばしい曙へ導いていけるだろう。いわゆる芸術というものは、人間社会に普遍的な『真実』を表現する様式であって、特定の時代に媚びたまちがいや、浅はかさや、不自然や、新奇を表現するには適しないものである。芸術はよき人間のために、少なくともよき人間を目指す人間のために存在してきた。それは、人間の憧憬して止まない神や道徳と同じく、この世を自らの誠実さのゆえに困苦の沼と捉えるよき人間たちが発明したもので、自己顕示の舞台と錯覚する悪しき人間どもが生み出したものではないからだ。