無題

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三百七十一

 私は自分がひどく教養のない人間であることを知っていたから、ときどき茶話会や飲み会などに出て、教養ある人びとのあいだで政治や詩や哲学の問題などが語られているのを見ると、恐ろしいような、身のすくむような感じに襲われた。私はそうした席に出るたびに、知識の(きれ)っぱしを披露しながら、今度こそは手の内を見破られはしないかとハラハラしながら、腕の悪い手品師が味わうにちがいない感情に捉われた。ところが、そのような会合を円滑に進めるには愚かさこそが必要だったためか、あるいは、わかりもしない知識を語ったりそれに感嘆したりしている彼ら自身が、そんな欺瞞の中に満足を見出していたためか、いずれにしても私の無教養は見破られずに、私の才人の名はまったく揺るぐことなく、そのせいで私がどんな低俗な愚かしいことを言ってもさしつかえなかったし、みんなが私の一言一言に感激し、その言葉の中に私自身夢にも思わなかった深い意味を探ろうとするのだった