犯罪

         四百三十四

 

 日常の生活に他から求められる余儀ない都合さえあれば、その都合を狂わせたり失ったりするのが惜しいので、人は罪を犯す暇がなくなる。犯罪の温床は、信頼に見返る必要のないところに生じる怒りや絶望や自棄を育む『暇』である。

 

姦夫

         四百三十三

 

姦夫は決して女の亭主を嫉妬しない。

     ―モラビア『倦怠』

 

         四百三十二

 

 どんな女性の美も、特定の男性に向けられたものではない。彼女はそのまま美的に完結して存在するのである。有機的な人間のことにかぎらない。たとえば自然といったような無機物でさえ、それが美を提示するのは自分に向けてではないと感知し、自分とは別の、自分からは独立した存在であると感じることが大きな喜びであるような、尽きることのない共存の満足感をもって描かれた芸術は少ない。普遍の照射を行う他を見つめながら、自らも普遍の照射を願う静かな決意にあふれ、他の照射の助けを借りて自らを発光させようという野心を封じる鋭いくびきとでもいったものを内蔵する、厳かな芸術に浸りたいものだ。

 

使命

         四百三十一

 

 倦怠と性的狂乱のあいだを交互に往復していた時代に、私の使命はその時代から脱皮しないことに定まった。

 

川田拓矢0歳

1