模倣

         四百十八

   

 自分よりも何かの点で優越した他人にあやかりたいと思う人びとの考えることは似ているので、住む場所も、家も、調度も、嗜好品も、身につける資格までもよく似ている。どれもこれも、ある種の人びとがある種の人びとにあやかりたいために整えるものだ。ところが彼らには模倣の意識はなく、それぞれがみな自分のしていることを特殊なもののように思っている。

都合

 

         四百十六

 

 自分の都合ばかり考えている人間は、学問があっても才知があっても財産があっても、あんまり貴いものではない。

                                         

                          ― 伊藤左千夫『姪子』

無題

         四百十五

 

 ばかなことをしたり思わぬ羽目を外したり、そのために泣いたり苦しんだりするのが、人間の人間らしいところじゃあないだろうか……

無題

          四百十四

 

 私がもっとも激しく怒りの情動を発するもの ― 権力のもとに横行しているあらゆる非人間的行為 ― このことに私はあまりにも寡黙すぎた。決して寛容に看過していたわけではないが、しかしそれのすべてを描くことはできないという怠惰な諦観があった。諦観は捨てよう。私の後半生は、その一部でも剔抉し、芸術の神の掌に預けることに捧げられなければならない。

                         ―山本周五郎『五瓣の椿』

四十七歳。

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         四百十三

 

四十七歳。十月。夜七時。個として滅ぶことの恐怖が突然失せる。

 

無題

         

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          四百十二

 

そぞろ夢み―この猫の顔を記憶に留めることのみを仕事とし、人として何もせずに死んでいけたら!

 

無題

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          四百十一

 

 自分の古巣に錦を飾る。人間としてこれほど幸せなことはない。自分のむかしの同僚が、いまだにそこにくすぶっているのだから。人間の作り上げた社会は、来し方行く末この仕組みで動いてきたし、動いていくだろう。勤勉と几帳面という天下無敵な市民的美徳がなければ、その幸福は訪れない。詭弁や遠吠えではなく、ジプシーの私には、「錦を飾るべき古巣がない」という、彼らより数段上等な幸福がある。そのことが、私に生涯かけてのアンニュイと、怠惰と、人間としての真正な幸福を保証した。

 

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