形而下的な苦痛

         

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          三百八十九

 

 親しい人間や知り合いを初めて家に迎えたとき、ふと黙りこんでしまうことがよくある。客に対して何か皮膚感覚的な気恥ずかしさを覚えるのだが、それは物的人的なものを取り混ぜた住いのたたずまいといった形而上的なものに対してではなく、たぶん、普段人目に曝さずにしまわれている内臓の機能を垣間見られる形而下的な苦痛が素になっている。

無題

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          三百八十七

 

 人は権力悪、あるいは暴力悪に染まっている人物を蛇蝎のごとく忌み嫌うけれども、弱い人間はこれまでの自分の非力な世界からあまりにも遠く離れた不思議な狂気の世界へ、何が善で何が悪か、何が理で何が非か知ることもできない力の世界へ戻るすべもなく連れ去られると、ひたすら権威や暴戻を意識的に振舞いつづけるしかなくなってしまうのである。素性を探れば、彼は蛇蝎ほど力はないとわかる。元来蛇蝎のごとく凶暴な人間は、権力も暴力も必要としない。身に備わった機能で敵を殺せるからである。

 

                  
         三百八十六

 

 人びとはみな、束の間のものにすぎないはかない幸福をつかむために戦い、苦しみ、悩み、そうして自分の永遠の魂を滅ぼしている。

 

何もせずに

                     

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                 三百八十五

 

 私たちは、何もせずに、しかも、心安らかでいることはできない。

 

理知派・理論派

JUGEMテーマ:読書

         三百八十四

 

 どんな分野にも、理知派・理論派を標榜する人びとがいる。それは科学という抽象理念の上に立って、つまり真理の客観的認識の基礎の上に立って絶大の自信を持ち、もう治療の見込みのないほど、狂信的なまでに自信過剰に凝り固まっている人びとである。

彼らの自信は始末が悪く、頑強で、鼻持ちならない。というのは彼らは、自分はいかなる時代の人間をも組み敷く真理を知っている、それは理論の先端をいく科学であって、これこそ自分にとって絶対の真理である、と思いこんでいるからだ。客観的理論という亡霊を愛するあまり、現実世界への適用という、実地を目指す理論そのものの目的を忘れているような、そういう笑止な理論家だからだ。

 

無題

JUGEMテーマ:読書

        三百八十三

 

 煩悩のない人生なんて、なんだか味気ないような気がする。悩んだり、傷ついたり、いろんな夢を追っては、挫折をくりかえす。そんな苦しみや悩みがあるからこそ、人生の喜びや楽しみもあるんだ。

そもそも、人間なんて、矛盾に満ちた存在なのさ。善と悪、美と醜、愛と憎悪、そんなものが混沌としてバランスを保っている……。それを無理に分けようとするから、悲劇が生じるんだ。

    漫画・西岸良平『鎌倉ものがたり』

 

関西化

            
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         三百八十一
 
 東京がすっかり関西化してしまって、東京人がけちな反感を抱いても追いつかなくなった。今日では東京人のプライドはもちろんのこと、東京人自体が存在しなくなったのだから、世話がないと言えば言える。ただ、それなのになぜ関西人は東京だけを取り込もうとするのだろう。人は容易なことしかやりたがらないという法則から考えると、東京は他地域に比べて植民地化が容易だということだろうか。いっそのこと、日本中を関西化してみたらいかが? 征服の気骨があるなら、世界中を。
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