【心がけ】

JUGEMテーマ:読書
                   三百八十
 
 書いた本人も意味がわからないし、だれにも必要のない文章というものを書かないこと。

無題

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             三百七十八
 
 どんなこともすべて、私たちが想像したり語ったりできるような様相をけっしてとらない。

 

悪ふざけ

              
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                                       三百七十七
 
 人びとが人間の魂の美しさを求めない特定の時代に映える文学作品にあるのは、怠惰な、目利きでない群衆の動向を是認するまちがった哲学、浅はかな詭弁、不自然な構想、その意味での少しばかり目新しい色彩、ただそれだけである。作者も批評家も、そんな時代に悪賢く立ち回ることのできる才覚に恵まれたことをしみじみと感謝し、有頂天になっている。そういう時代は早く過ぎ去らなければならない。
 もはや文壇そのものがそういった饒舌で正しそうな作品に騙されないようになり、その種の作品もすっかり悪ふざけの手段に行き詰まってしまったら、じっと耐えて待ち構えていた天賦の芸術家が、数万馬力で時代を喜ばしい曙へ導いていけるだろう。いわゆる芸術というものは、人間社会に普遍的な『真実』を表現する様式であって、特定の時代に媚びたまちがいや、浅はかさや、不自然や、新奇を表現するには適しないものである。芸術はよき人間のために、少なくともよき人間を目指す人間のために存在してきた。それは、人間の憧憬して止まない神や道徳と同じく、この世を自らの誠実さのゆえに困苦の沼と捉えるよき人間たちが発明したもので、自己顕示の舞台と錯覚する悪しき人間どもが生み出したものではないからだ。


 

精神的優越

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三百七十六
 
 男たると女たるとを問わず、精神的優越を得るためには、まず肉体的な美から先に用意しなければならない。
 

労働

          
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          三百七十五

 労働という賃取り仕事のあらゆる分野が、私の目から見れば、虚偽と悪が溶け合ったものだった。労働をすることは何ほどのものでもないと思いながらも、その虚偽と悪が明瞭に見えすぎて、真剣に参加を目論むことができなかった。とはいえ生きなければならなかったし、何もしないでは生きられなかった。私は働いた。そうして労働は、魂を脅かす脅威となった。私はその脅威を忘れたいばかりに、手近な熱中の対象に身をゆだねた。やたらに酒を飲み、馬券を買いあさり、女を抱き、書物に没頭した。誘われればあらゆる集会の場所に出かけ、飲み食いして身体が快く温まり、周りのすべての人びとに親しみを覚え、頭の回転が滑らかになって、どんな考えにもその奥を突き詰めるなどという煩わしいことはせずに、表面的に反応した。そうするとようやく私は、恐れていた人生のもつれは思ったほどややこしくはないものだと、漠然と意識するのだった。もやもやした頭でしゃべったり、話を聞いたり、本を読んだりしながら、そんなもつれは存在しないのではないかと疑ったほどだった。
 やがて、それがまちがっていることがわかってきた。やはり人生の結び目は恐ろしいくらいもつれていて、それを解 ( ほど ) くためには、生活の希望に満ちた充足によって救われることが必要なのだと痛感できた。希望の種類は千差万別で、人によってちがうということもわかった。ある者は虚栄の装飾で、ある者は博打で、ある者は学問で、ある者は政治で、ある者は女で、ある者は愛玩物で、ある者は冒険で、ある者は芸術で、ある者は商売で、それぞれの人生に希望を見出すのだ。くだらないものも、重要なものもない、みな同じことだ。ただ自分のできることで、人生のもつれを解きさえすればいいのだ、と私は強く確信したのだった。 

自信満々の人間

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               三百七十四
 
 私は、力もないのに自信満々の人間が一番憎く、そして一番怖い。だから、いたずらに彼らを刺激しないために、自分の行為や手柄をつまらないものに見せようと努める。
 

無題

         三百七十三

 自己を正す―自分を自分にとって正しきものにする。私たちが周囲の環境と関係なく志向できるのは、この目的だけだ。しかしこの目的は、私たちにきわめて苦しい努力を要求する。努力が足りているという慢心に惑わされて、私たちはこの目的を見失い、自力更生を目ざそうとしない怠惰から、受け入れる資格も素地もない絶対神の探究に走ったり、自分自身が醜い行いと堕落の見本でありながら、いかにも素知らぬ振りして、人類全体の矯正を叫んだりする。宗教組織というものが純粋な人間を救済しない理由は、組織に属する人びとがそんな個別の自らを隠して、あるいは意識すらせずに、集団で熱中する社会活動という代物が、はなはだいかがわしい思い上がりの産物だからだ。私たちは個としての現実生活の困難を遠ざけて全体に融合してしまえば、逸早くこの目的が達せられると思いがちだ。ところが、浮世の個別の波風の中でこそ、この目的は十全に達せられるのだ。
 しかり、浮世の中で! 人は相対的な寛容ではなく、絶対的な他との比較によってしか、自己を知ることができない。比較によってしか、あるがままの自己を見つめることができない。だからこの目的は何よりも、比較という他との戦いによって達成される。自分自身との戦いなぞありえない。人は自分と戦ったりはしない。他との戦いの中でこそ、個別の大小を知り、卑小な自分を生かしめる世界の無常を感得し、力及ばない戦いの果てにある個別の死を悟ることができる。人は全体的な死というものを悟ることはできない。
 
愛別離苦もまた、比較から生まれた他との精神的角逐という意味で、大いなる戦いだ。苦しく、淋しい戦いだ。その個対個の戦いのさなかに生じる無常観のみが、私たちに個としての生活の虚しさを教え、そこからの刻々の新生の意欲を助成してくれる。浮世の精神的、肉体的な苦痛にもかかわらず、決して生を怨まずに、しかも美の頂点として死を見つめ、自分の内なる魂を清らかさの極みに近づけるよう努力し、しかも常に死を準備する心持ちにさせてくれる。そのときにこそ、個別に生きた人間のみに与えられた褒賞として、とりわけ彼の吐き出す言葉は輝かしい光を放つだろう! 烏合へ身を投じた人びとに、言葉はない。

知識

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         三百七十二

 私はまったく、知識というものを扱いきれない。その原因は私の自尊心だ。私は自分という人間的存在を知識の上位に置こうとする。

無題

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三百七十一

 私は自分がひどく教養のない人間であることを知っていたから、ときどき茶話会や飲み会などに出て、教養ある人びとのあいだで政治や詩や哲学の問題などが語られているのを見ると、恐ろしいような、身のすくむような感じに襲われた。私はそうした席に出るたびに、知識の(きれ)っぱしを披露しながら、今度こそは手の内を見破られはしないかとハラハラしながら、腕の悪い手品師が味わうにちがいない感情に捉われた。ところが、そのような会合を円滑に進めるには愚かさこそが必要だったためか、あるいは、わかりもしない知識を語ったりそれに感嘆したりしている彼ら自身が、そんな欺瞞の中に満足を見出していたためか、いずれにしても私の無教養は見破られずに、私の才人の名はまったく揺るぐことなく、そのせいで私がどんな低俗な愚かしいことを言ってもさしつかえなかったし、みんなが私の一言一言に感激し、その言葉の中に私自身夢にも思わなかった深い意味を探ろうとするのだった

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