都会

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   三百三十

 

 都会。ここから広く外に眼を向けて活動したような人間は、まだ一度も生まれていない。何千年ものあいだ、たくさんの、しっかりした市民を生み出しはしたが、一度も偉人とか、天才を生み出したためしはない。それもそのはずで、彼らの憧れとなる存在は、自分の力量で手の届く小役人か素封家だからである。彼らはそういった人種の前では頭を低くして、付き合ってもらいたがる。陰ではさんざん悪口を言うのだが、おかしなことに、彼らのいちばんの望みは、できることなら勉強をして小役人か素封家になることである。この情熱は冷めることがなく、累代、子々孫々にまで伝えられる。