機械

         四百五十一

 

 現代人は機械というものがどんな階級の意志にも区別なく従うように、彼らの意志にも大人しく従う奴隷であることを知っている。スイッチやキーを押して奴隷を扱うのに特別な頭脳など必要でないことを知っている。大人しくて勇猛な奴隷さえ抱えていれば、とりわけ現代のように非情な時代にあっては、自分たちだってかつての奴隷時代の政治家や資本家と変わりない恐るべき存在であり得るし、指一本あれば、まるで原子爆弾を投下するように、それを操って一つの都市を破壊しつくすことさえできるはずだと知っている。しかし、その知識は実践されることはない。

 新人類とか、PC族とか、ケイタイ猿などと言っても、結局それは、現代という非情のくせに優しい保護森のような体制のもとに雌伏している独裁者の予備軍からよみがえった不死鳥にすぎない。おそらく彼らの態度の素になっているのは、一種の馴致された潜在意識、つまり人間とはしょせん半獣の存在でしかなく、だからこそ太古以来ひたすら、たいして頭脳を必要としない定型操作が可能な奴隷を使って、欺瞞と暴力という安易で有効な支配体制を確立してきたのだという意識をいわば本能的に持ち、それを原動力にして永劫復古する見果てぬ夢であろう。

 

 

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